REPORT

第5回 1月23日(土)
「首都直下地震 Part1 〜備えと行動〜」開催レポート

開催レポート

■ 自助・共助を高め、災害地域と非災害地域の助け合いネットワークを広げる。

大きな災害はいつ発生するかわかりません。防災を特別なことにせず、日常的に防災を考える・学ぶために、渋谷区では2018年から「渋谷防災キャラバン」を開催しています。新型コロナウイルスの感染拡大が広がる2020年度は「渋谷防災キャラバン」をオンライン開催。1時間半のオンラインイベントにまとめ、いつでもどこでも防災が学べる環境を整えました。

1月23日(土)に配信した渋谷防災キャラバンオンライン第5回目のテーマは「首都直下地震」です。今後30年以内に70%の確率で起こると予測されているマグニチュード7クラスの大地震に対して、私たちはどんな備えをしておくべきなのか。なるべく丁寧に伝えようと、前半を1月に、後半を2月にお届けします。

前半の1月は「Part1 備えと行動」について。ゲストは東京大学の生産技術研究所 教授、社会科学研究所 特任教授であり、まちづくりの観点から防災を研究する加藤孝明さんに来ていただきました。

また2020年末に収録した、長谷部健渋谷区長とLOVE FOR NIPPON 代表 CANDLE JUNEさん、渋谷区危機管理対策監の吉見隆さんによる「渋谷防災キャラバン・スペシャルトーク」の模様も配信。全国各地で災害支援活動をするCANDLE JUNEさんが発案した、新しい来街者向け防災マップ「SHIBUYA OK!? MAP」に込めた思いなどを聞きました。

■ 大きい災害だからこそ大切になる自助・共助

「今後30年の間に70%の確率で起きる」とされている首都直下地震。どのくらいの被害が想定されているかご存知でしょうか。内閣府のシミュレーションでは、さまざまな建造物が破壊、交通インフラの遮断、水道や電気は使えず、木造住宅密集地では火災が発生、帰宅困難者が溢れるなど、壊滅的な被害が予想されています。想定されているマグニチュード(以下M)7は、阪神・淡路大震災とほぼ同レベルです。渋谷区でも大きな被害が想定されています。

 南関東は、200~300年に一度、M8クラスの大地震に襲われていることが歴史的に明らかになっています。さらにM8クラスの地震が発生した前後100年ほどにM7クラスの地震が頻発していることもわかっています。直近はM8クラスの地震は、1923年の関東大震災です。つまり、現在はM7クラスの地震が発生する可能性の高い時期なのです。

首都直下地震のような大災害が発生した場合、私たちは心に留めておかなくてはならないのは「自助・共助・公助」の「自助・共助」です。これまでの大災害の経験から、公助だけで十分なケアが間に合わないことわかっています。実際、阪神・淡路大震災では、家の下敷きになった人々のうち約8割が自助・共助で助かることができたというデータがあります。

いざというときに、まず大事なのは「自助」。自分を自分で助けることが第一優先です。渋谷区では自助を手助けする「渋谷区民防災マニュアル」を発行しています。情報収集、自宅の安全点検、備蓄品などの事前の備えから、初期消火の方法、避難の流れ、安否情報の取得など災害時の行動指針も掲載しています。さらに渋谷区では、防災用品の斡旋、家具転倒防止金具購入費用補助、家具転倒防止金具無料取付事業も実施しているので、ぜひ活用してください。

マニュアルはありますが、一人ひとり必要なものは違います。持病の薬や家族の状況など、自分に必要なものを真剣に考え、備えを進めましょう。

自分や自分の家族の安全を確保したら、次に大事なのが地域や近隣住民で助け合って命や地域を守る「共助」です。渋谷区内では、地域で活動する消防団や自主防災組織が、日頃から自主防災訓練を年に数回実施しています。

渋谷区自主防災組織連絡協議会の小林三雄会長は「参加者は高齢者がほとんど。ぜひ若い人も参加してもらいたい。新型コロナウイルスの影響で、人と人とのつながりが希薄な今こそ、いざというときのために地域の防災訓練が重要です」と語ってくれました。

地域の防災活動が高齢しているというコメントを受け受け、ゲストの加藤先生は「防災だけでは人に関心を持ってもらうのは難しいだろうと思います。お祭りと防災をセットにする、お祭りで地域コミュニティをつくることで防災訓練に参加していなくても災害時に助け合える関係や仕組みを構築するなど、日常的なできごとと防災を紐付ける工夫が大事になるでしょう」と述べられました。

■ 元気な人は率先して助ける側に回ってほしい

東日本大震災のとき、首都圏で課題となった「帰宅困難者問題」。長時間歩いて帰宅した方や、バスやタクシー待ちの長蛇の列を覚えている人も多いと思います。

「311では、首都圏の直接的な被害は決して大きくなく、交通インフラもほどなくして復旧しました。しかし、首都直下地震では、道路も鉄道も被害が出るはず。東日本大震災の帰宅困難者の状況は『大したことなかった』と思えるほどの混乱が起きるのではないかと考えられます」(加藤先生)

渋谷区では日中のピーク時に14万5千人が滞在していると言われています。また、滞留する場所のない帰宅困難者は2万7千人が発生すると想定されています。この大量の人が帰宅時に被災する可能性もありますし、帰宅困難者の行列が緊急車両の通行など救援活動の妨げになることも考えられます。

渋谷区では鉄道事業者、商業施設、学校などと共に「帰宅困難者対策協議会」を設置し、情報共有や勉強会、受け入れ訓練などを実施しています。協議会の参加施設のひとつである「渋谷ストリーム」では、約1,300人の帰宅困難者の受け入れと、約1,300人に対して3日分の備蓄品を備えています。

しかし、帰宅困難者の数に対して、受け入れのキャパシティが足りていないのが現状です。したがって、お年寄りや子ども、妊婦さんや障害がある方などの受け入れが優先されます。

つまり帰宅困難者になったとしても、「自助」が非常に大事になります。

自助を助けるために、渋谷区では一時待避所の方向を示すため、街中に矢印の壁画アートを描く「アロープロジェクト」を展開したり、、街なかに帰宅困難者受入施設を示すマップを設置していますので、ぜひ街を歩くときに確認してみてください。

「災害時においては、元気な人が人を助ける活動、つまり「共助」にまわることで現場の状況は好転していきます。とくに渋谷は若者の街です。若者がどう動いてくれるかは渋谷区の防災の大きなポイントです」(加藤先生)

■ 自助・共助を高め、助け合いのネットワークを広げよう

プログラムの最後には、2020年末に収録した長谷部健渋谷区長とLOVE FOR NIPPON 代表 CANDLE JUNEさん、渋谷区危機管理対策監の吉見隆さんによる、「渋谷防災キャラバン・スペシャルトーク」の模様を放送しました。

もともと渋谷区では、以前より代々木公園で「総合防災訓練」を実施していました。そこにより多くの人が参加し、防災を身近なものにするために、お祭りという楽しさの伝わるフォーマットにしたのが「渋谷防災フェス」。

しかし、いざというときには「渋谷区」よりもさらに小さな、町やエリアごとに避難所の設置や避難者の受け入れをしていくことになります。渋谷区にある11地区を月ごとにキャラバンし、地域のコミュニティとして防災意識を高めようという目的で計画されたのが「渋谷防災キャラバン」でした。

2020年度は、新型コロナウイルスの影響で、計画を変更。オンライン開催でお届けしてきました。しかし結果的には、これまでにない手応えを得られたと長谷部区長は話します。

「社会情勢からオンライン開催にせざるをえない状況でしたが、オンラインの良さも実感しています。アーカイブ映像が残ることで、当日見られなかった人も話を聞くことができます。実際に、だんだんとアーカイブの再生回数は上がっていますね」(長谷部区長)

これまで3度出演した吉見さんは「市街地のほとんどが水に浸かり避難所が使えなかった陸前高田市、本来は避難所ではなかった病院が避難所になった釜石市など、非常に苦労しながらも地域で協力して避難所を運営したみなさんの話を聞いて自助・共助が非常に重要だと改めて感じた」といいます。

CANDLE JUNEさんは、以前から渋谷防災フェスにも携わっています。なぜなら、CANDLE JUNEさんは、東日本大震災以来、 全国各地で発生する地震、水害、台風被害など、多くの場所で災害支援活動をしています。その活動母体が自身で代表をつとめる「LOVE FOR NIPPON」です。

「LOVE FOR NIPPON」は、東日本大震災直後、東京にいるCANDLE JUNEさんとそのの仲間による支援活動からスタートしました。福島に物資を運び、炊き出しを続け、もうすぐ10年が経とうとする今もなお、毎月11日にキャンドルナイトを中心としたイベントを福島で開催しています。福島に足繁く通いながらも、全国の災害地域で支援も同時に並行で続けています。

「実際に被災地を通うと、県や市といった大きな単位でなく、地域コミュニティで人々がどんなアクションを起こす大事だということを実感します。災害時の最初のステップはとても重要です。すばやく地域で助け合い、適切な対応ができている地域はそのあとの復旧、復興のステップにもすばやく移行していきます。早い地域は、他の地域の見本になればいいし、手助けをすればいい。渋谷防災キャラバンの発想はとても素敵だと思います」(CANDLE JUNE)

最近渋谷区が作成した「SHIBUYA OK!? MAP」は、これまでの災害支援の経験をもとに、CANDLE JUNEさんが発案したマップです。避難場所や帰宅困難者受入施設を示した渋谷の全体マップ、指差しで外国の方とも助け合える多言語ツール、Free Wi-Fiの案内、防災のポータルサイトやアプリ、渋谷のローカルラジオのリンクを貼ったQRコード、さらに必要な情報を手書きで書き込めるメモスペースもあります。

作成にあたっては、渋谷に関わるさまざまな人にも集まってもらい、アイデアを出しながら完成させました。街に住む人が自らの手で考えて、育てる防災マップです。将来的には、他の街も真似して、自分たちの街なりの防災マップを作ってほしいという願いも込めたとCANDLE JUNEさんは言います。

「日頃から防災意識のある人がコミュニティ内に増えれば、自分たちが助かるだけでなく、どこかで災害が起きたときに、助けに行ける。災害地域と非災害地域の助け合いのネットワークが構築できるといいな、と考えています」(CANDLE JUNE)

次回の配信のテーマは「首都直下地震 Part2~災害に強いまちへ~」。2/20(土)14:00から配信予定です。

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